MRスパイダーとはSW20型のMR2というモデルをベースにし、トヨタテクノクラフトがオープンカー仕様にした特装車です。マイナー中のマイナーで車に詳しい方でも知らない方が多く、一生のうちで街中でお目にかかれることはまずないでしょう。と言い切れるほどかなりマイナーで幻のモデルです。とにかくマニアックな車であることは間違いないMRスパイダー、乗る機会を考えると性能や使い勝手よりもこのモデルにまつわる物語を紹介していきたいと思います。
そもそもMR2とは
出典:ウィキメディア
MRスパイダーを語るには、まずMR2自体がどういったモデルなのかを知る必要があります。というのもMR2自体は独特な車ではありますが国内外問わず愛され、今尚中古車でも多く見かけるモデルだからです。1984年から1999年の間に販売されていた日本で初めての市販化されたミッドシップ車で、2人乗りでありエクステリアではリトラクタブルヘッドライトが特徴です。現在ではまず作られることはないであろうタイプの車ですが、当時はデートカー、スペシャリティカー、スポーツカーの人気が高かった時代で、バブル経済の真っ只中ということもありよく売れたモデルでした。元はトヨタの豊田英二社長が「トヨタには将来、常識では考えられないひと味違ったクルマがあってもいいのではないか」と主査達に話したことがきっかけで作り上げられた車でした。
初代の特徴は張り出すような少しアメリカンな要素も加わったエクステリアに、MR2自体は同一形式で10年間販売されているのですが、これはトヨタにおいて実はとても珍しくそういう点でも貴重なモデルです。MR2が販売終了した後は、MRSが後継車種となりました。
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さらに1984年と1985年には日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。MR2は評価もしっかり伴なっており、当時は車好きを問わず誰もが知っているモデルだったと言っても過言ではありません。だからこそ現在万が一街中でMRスパイダーを見かけたら、当時のMR2人気を知っている人は懐かしいと思うと同時に、ええ!オープンカーモデルもあったの!?と驚くわけです。
MRスパイダーは2,000cc4気筒の自然吸気エンジンのみで、MR2で選択できるターボでは製造されていません。というのもオープンカーに仕立てるのにあたり、注意しなくてはならないことの1つに剛性の問題があります。オープンカー仕様にするとどうしても剛性が弱まります。その点を補う為にターボモデルは作っていません。
製造台数は92台
そもそもトヨタテクノクラフトというのはトヨタ自動車グループに属していた完全子会社であり、去年株式会社トヨタモデリスタインターナショナルと株式会社ジェータックスと統合し、現在は株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメントという名前の会社になっています。トヨタテクノクラフトの本来の目的は東京トヨペットが下取りした車を整備して再生し、また販売できるようにすることでした。それがだんだんとトヨタの様々なモデルの特装車を作るようになりました。有名なものだとハイメディック、クラウンパトロールカーなど国に関わる車が挙げられます。
そんなトヨタテクノクラフトがMRスパイダーを作ったのですがなんと総生産台数が92台なのです。しかもこの内3台は試作車なので実質販売されて流通しているのは89台ということになります。かなり希少な車であることが伺えますね。MR2の2代目であるSW20型にはⅠ型からⅤ型という種類があります。これは1989年のモデルチェンジが行われたものをⅠ型、1991年のマイナーチェンジが行われたものをⅡ型、1993年のマイナーチェンジが行われたものをⅢ型、1996年に一部改良が行われたものをⅣ型、1997年に行われた最後の改良モデルをⅤ型と呼ばれています。MRスパイダーはⅢ型から製作されておりⅢ型をベースにしたのが74台、Ⅳ型をベースにしたのが7台、Ⅴ型をベースにしたのが8台です。Ⅳ型とⅤ型ベースなんて希少中の希少です。現在残っているのかどうかも把握が難しいことも考えられます。
それぞれの特徴を挙げていきますと、Ⅲ型…エンジンをさらに強化し、スポーツABSが採用されストラットタワー部に金属プレートを入れることで剛性を高め、さらにスポーティーな乗り心地にこだわっています。先代のⅡ型とはエクステリアも大きく変化していますが、世の風向きも変わってしまいバブル崩壊によりスポーツカーそのものの販売台数が大きく低下してしまい、MR2の販売の受注生産という形を取らざるを得なくなりました。
Ⅳ型…スポーツABSを4輪を別々に制御する4チャンネル方式に変わりました。エクステリアではクリアランスランプを白くし、ホイールを鏡面加工、またガラス部をブロンズからグリーンへと変更するなど細かな部分ですが変化が見られます。安全面ではSRSエアバッグがフロントシートに標準装備となりました。Ⅴ型…軽量化させるために4チャンネルを3チャンネルに再び変更し、ホイールも軽量化させるなどずっしりと迫力よりも、軽くして使い勝手と燃費を少しでもよくしようというのが垣間見えます。
まとめ
MR2自体はよく知られているモデルですが、MRスパイダーとなるとかなりニッチなモデルです。そのため車そのものの情報を集めるのが困難な部分があり、現在インターネットで検索してもあまり出てこないのが実情です。そのためモデルのスペックを知りたかったらMR2で調べていただくのが良いかと思います。
兎にも角にも非常に珍しいモデルであることは間違いありません。しかしながらわずかに中古車市場で見かけることもできます。正直購入する方はコレクターやかなりマニアックな方であることは間違いないでしょう…販売が終了してからもう20年近く経つモデルです。どんな車であっても20年経てば見かけること機会がなくなってくるのはどんな車でも同じです。ましてや生産台数が92台の車なんてもうなくなっているんじゃ無いかと思ってもおかしくありません。しかしポツポツと残っているようです。(そんな貴重な車は簡単に廃車にできないのでしょうが…筆者はそんな車を持ったことがないので…)
それだけ珍しいのでインターネット上では街で見かけただけでも、「見かけました!」という声がありますね。〇〇で見かけたので、もしこれを見ているオーナーさんへ!ご連絡お願いします!なんてものまでアップされています。そんなモデルなんてなかなかないと思います。こうやって愛車から広がる人と車の出会いはとても羨ましいものがあります…。希少車の醍醐味ですね。正直中古車で見つけて、購入すると根気強さは必要となってくると思います。MR2自体はメジャーな車だったのでパーツなども長い間問題なく見つけてこれたそうですが、近年やはり大分時間が経っているということもありグッとパーツが減ってきたそうでMR2でも維持していくのが大変になってきているようです。如何せんそれだけ古いモデルだとどんな車でも維持費がかかって仕方ないですし、オープンカーとなるとさらに状態維持が大変ではあります。しかしそれを超えた希少価値があり愛せるモデルでもあると思います。
すでにファンである方なら私が乗ってみてください!なんて言わずとも中古車屋さんに足を運んでいることと思いますが、今MRスパイダーなんてモデルがあるのを初めて知って興味をもったという方がいらっしゃったら、是非是非臆することなく中古車市場で調べて実際にその姿を目の当たりにしてみてください。とても貴重な車であることは間違い無いですし、今後見かけるのも乗るのもさらに減少していきます。知る人ぞ知る車ではありますが、1回触れた機会があればそれは一生の思い出になるはずです。(もちろんご購入の覚悟のある方は是非購入してレポート書いて世に発信していただければそれほど嬉しいことはありません…なんて)
[ライター/A. Oku]