ホンダ ビートは残り続ける。歴史に残る名車は現在でも人気が衰えることはない

ホンダの軽自動車といえば?と聞かれたら何を思い浮かべますか。現在ではホンダNシリーズとしてNボックス、Nワゴン、Nワン、Nスラッシュ、Nバンなどの統一してシリーズ化しています。かつてはライフ、バモス、トゥデイなどそれぞれ特徴がある軽自動車を展開していました。さまざまな車種の軽自動車を販売してきたホンダですが忘れてはならない車種があります。それは軽自動車スポーツカー。ホンダの軽自動車スポーツカーと言えばS660ですがS660が誕生したのはかつてホンダが製造していた軽自動車オープンスポーツカービートがあったからといっても過言ではありません。今回はS660誕生のきっかけにもなり現在でも人気が高いホンダビートの秘密について探っていきます。

ホンダ ビートとは?


出典:ウィキメディア

ホンダビートはホンダが1991年から1996年まで生産していた軽自動車オープンスポーツカーです。全長3,295mm全幅1,395mm全高1,175mmのビートは1990年から1998年まで施行されていた軽自動車規格に適応したサイズです。パッケージは2ドア2シーターでソフトトップを持つオープンモデル。トランスミッションは5速MTのみで座席後方にエンジンを搭載するミッドシップを採用していました。駆動方式は後輪駆動、いわゆるMRと呼ばれる方式を採用。エンジンは直列3気筒自然吸気で1990年から施行された新規格660ccの排気量を持つE07A型を搭載。エクステリアは当時販売していたホンダの本格スポーツカーNSXを縮小したような低く伸びやかでオープンスポーツカーらしいスタイルが特徴です。両サイドにはエンジン冷却用のエアインテークが設けられミッドシップであることを強調しています。

幌を開けたときの解放感あるオープンカーらしさとソフトトップを閉じたときの台形型ルーフラインが作り出すクーペらしいシルエットを軽自動車という限られた規格の中で実現していました。ヘッドライトやリアテールライトは横長の形状、バンパーも横方向にスリットが入れられているため視覚的にワイド感を与えてくれます。インテリアはスイッチ類が集約されたセンターコンソールを中心に左右対称に広がりカーブしたダッシュボードの造形によって奥行きを感じられます。モーターサイクルのメーターをモチーフにした独立型3眼メーターとゼブラ柄のシートが特徴です。1992年には特別仕様車「バージョンF」を800台、「バージョンC」を500台限定販売、1993年には「バージョンZ」を販売しました。しかしスペシャリティカーの市場低迷と軽自動車にも普通自動車同等の衝突安全性が求められ軽自動車規格の変更が行われたためフルモデルチェンジすることなく1996年に1世代限りで生産が終了しました。

革命を起こしたビート


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ビートは少なからず需要がありファンが存在していたモデルでありましたが時代の変化や安全性の観点、法律の改定により生産を終了せざるを得なかったのです。生産が終了し長い時間が経ちましたが今でも根強い人気を誇るビート。では、なぜビートがこんなにも人気なのでしょうか。人気の理由を追求していきましょう。

〈軽自動車初〉

ビート人気の理由その1は軽自動車として初めて採用されたメカニズムです。軽自動車という制約がある日本独自のカテゴリーで初めてミッドシップにエンジンを搭載しました。どんな自動車であろうと最も重く基幹パーツであるエンジン。このエンジンを搭載する位置によって自動車の挙動が大きく変わります。ミッドシップレイアウトのメリットは重量物を前輪と後輪の間である車軸間に収めることによって駆動性能の向上やハンドリングの向上に繋がります。鼻先が軽くなるミッドシップは素直で軽快なハンドリングをもたらすだけでなく駆動輪である後輪に荷重を乗せやすくなり路面にタイヤをしっかりと押し付けることが可能になります。ミッドシップレイアウトは前後重量配分のバランスが良くなり操縦安定性向上にも貢献します。ビートの前後重量配分は43:57(1名乗車時)と理想的な重量配分を実現。

MRを採用したビートは前後タイヤサイズが異なり前輪155/65R13後輪165/60R14としています。旋回を司る前輪と駆動に徹する後輪というように役割分担を明確にしている証拠であり本気でスポーツカーを作ったというホンダ魂の表れと言えるでしょう。他にも軽自動車で初めて四輪にディスクブレーキを採用しているのもビートの特徴です。安全面では軽四輪自動車初のSRSエアバッグシステム装着車を設定しています。(ビート販売当時はSRSエアバッグシステムオプション設定で当時の価格で80,000円でした。)

〈量産車世界初〉

ビート人気の理由その2は量産車としては世界で初めてミッドシップ・フルオープンモノコックボディを採用していることです。これまでのオープンモデルはベースとなる車両のルーフ部をカットしボディ剛性を得るためフロアまわりの強化をするといった手法がほとんどでしたが、ビートの場合には最初からミッドシップレイアウトのオープンボディ設計がされています。ボディ剛性を高めるためにフロアトンネルはボックス断面構造としただけでなくサイドシルの二重構造化や前後フレーム結合部の強化など徹底的に曲げ・ねじり剛性を高める工夫がされています。

〈レーシングテクノロジー〉

ビート人気の理由その3は自動車の最高峰を競うレースF1で使われているエンジンテクノロジーを応用させたシステムを搭載していることです。ビートが登場した1991年はF1においてホンダ全盛期。あのアイルトン・セナがマクラーレン・ホンダに在籍していた時代、ホンダエンジンを搭載したマクラーレン・ホンダは輝かしい成績を残していました。この頃F1エンジンに使われていた技術を応用したMTRECを新軽自動車規格に合わせた660ccエンジンに取り入れたのです。MTRECとはMulti Throttle Responsive Engine Control Systemのことで吸気効率を向上させる多連スロットル、安定したアイドリングとスロットルレスポンスをシャープにする燃料直噴制御マップ切り替え方式の2つを組み合わせたエンジンコントロールシステムを取り入れています。その他にも高出力高回転技術を採用することによりレギュラーガソリンを使う660cc自然吸気エンジンでありながらも最高出力64PS/8,100rpm最大トルク6.1kgm/7,000rpmを発生させます。軽自動車でありながら小排気量でありながらこれほどにまで高出力で高回転型エンジンを作ることができるのはさすがエンジンのホンダですね。

今でも手に入れられるのか?!


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初採用・新技術・応用技術を取り入れたホンダの軽自動車オープンスポーツカービートは今でも手に入れることができます。もちろん新車販売はしていないので中古車になりますが個体数は数百台が流通しています。中古車の車両価格は約15万円~約150万円。状態が良い車両や特別仕様車・限定車は190万円ほどの個体も存在します。数ある中でもオススメはノーマルグレードのビート。ノーマルのビートをオススメする理由は蘇らせることができるからです。ビートに乗ってみたい人やビートオーナーが心配することは年式の古さによる経年劣化や部品の調達が難しいのではないかという不安。しかし心配や不安は必要ありません。

なぜならホンダが2017年からビートの純正パーツの再販を始めているからです。ホンダの公式ホームページには「BEAT Parts」のページが存在しており「ビートを長く楽しんでいただきたいという想いで、一部純正部品の生産を再開することを決定」と記載されています。再販パーツは順次ラインナップを増やしホームページに公開。2019年1月時点で100種類以上の純正パーツが再販しています。ビート本来のポテンシャルを知るためにも劣化しているパーツを交換して素のビートを楽しみましょう。

ビートは残り続ける

ビートが作り上げた軽自動車オープンスポーツカーの新しい歴史。軽自動車初採用のメカニズム、量産車世界初の構造、過酷なレースの現場で得た技術を日本限定の最小カテゴリーである軽自動車に惜しげもなく投入されたビートは軽自動車の歴史だけでなくオープンカーの歴史、スポーツカーの歴史まで変えたと言っても良いでしょう。歴史に残る名車ビートは現在でも人気が衰えることなく、ビートオーナーやビートファン、ホンダファンの心を掴んで離すことはありません。多くのファンの意思を汲み取りメーカー自身もビートを後世に残そうという動きを見せています。今後も運転の楽しさ、エンジンを高回転までまわす喜びや快感を教えてくれるビートは語り継がれ乗り続けられることでしょう。そして、ビートがあったからこそ、ビートが長く多くの人に愛されているからこそ後継モデルにあたるS660が誕生したのでしょう。

[ライター/齊藤 優太]